お茶の知識

やぶきた茶とは!?なぜやぶきた1強時代なのか

杉山彦三郎さんへ 貴方の作った『やぶきた』は 現在では日本で一番飲まれています

緑茶には100品種以上ありますが、その中の栽培面積75%程度が『やぶきた』となっています。このやぶきたという緑茶は非常に美味しいですが、他の品種に比べ格段に旨いかというと、そうでもございません。他の品種も十分に美味しいです。

では、なぜ?このようなやぶきた1強時代になったのでしょうか。やぶきたを作った人はどの様な人物なのかを解説していきます。

やぶきたの生みの親 杉山彦三郎

やぶきた生みの親、杉山彦三郎は1857年(明治10年)に現静岡県駿河区で生まれ、1941年(昭和16年)84歳で亡くなります。

自己所有のたけやぶで2本の優良品種を見つけ、その内1本がのちの『やぶきた』となるものです。しかし当初はなかなか普及しませんでした。

杉山彦三郎は色々試しました。この時代は製造技術重視で尚、品種改良という概念さえない時代でした。そんな時代に品種改良に没頭している彦三郎を人々は異端児といい、付けられたあだ名は『イタチ』でした。

『イタチ』というあだ名は、いたちごっこ(堂々めぐりで物事がはかどらない)という言葉からきているのでしょうか?

彦三郎の苦難はまだまだ終わりません。彦三郎は品種改良の必要性を力説し理解を求めて回りました、

1910年頃(明治43年)彦三郎が50歳を過ぎたころ、一人の理解者、茶業中央会議所会頭の大谷嘉兵衛と出会います。この大谷は土地を買い中央会議所へ寄付し谷田試験場として提供。彦三郎の品種改良事業を応援しました。

1927年(昭和2年)大谷が茶業中央会議所会頭を辞する。品種改良への投資に快く思わない会議所から反発をくらう。地代を請求される。

1934年(昭和9年)会議所は試験地を県に委譲。彦三郎は試験場の引き渡し、二十数年の研究成果である、茶樹などすべて焼却されてしまう。・・・この時彦三郎はどの様な気持ちだったのででしょうか。私が聞いているだけでも涙が出てきます。到底納得できるものでなかったのは、想像できます。

経済支援を失っても彦三郎は品種改良への情熱は失いません。自費で茶園を購入して品種試験を再開。その時若者への指導もしていました。

1941年(昭和16年)杉山彦三郎84歳没。彦三郎が「選定した数種の国立試験場による審査表があるはずだ」と息子に遺言。最後まで彦三郎は品種改良に命を捧げていたのでしょう。普及を切望しながら目に出来なかったこと、無念であったに違いありません。

1955年(昭和30年)彦三郎が亡くなって14年後静岡県推奨品種に指定

なぜ1強になれた?

やぶきた 1強

なぜやぶきたは栽培面積が75%になるほど普及したのでしょう。

やぶきたは旨いだけでなく。育てやすく、増やしやすい品種であり、高品質であった。

やぶきたは耐寒性に優れており土地も選ばず、様々な土壌に対応できる適応力も持ち合わせていた。さらに成長が早い。

こういった理由から茶園が爆発的にやぶきたという品種を採用したのでしょう。

やぶきた名前の由来

杉山彦三郎が自己所有の竹やぶを切り開き茶園にした時に、北側を『やぶきた』南側をやぶみなみと名付けた。

品種改良とは??

品種改良とは

茶は受粉しません。茶樹を繁殖させるには、取り木、挿し木という繁殖が望ましいとされていて、現在では挿し木による繁殖が一般的となっている。

この取り木で行う品種改良が彦三郎が試行錯誤して行っていたものです。

やぶきたは天然記念物!?

杉山彦三郎が、自己の北側の竹やぶで見つけ『やぶきた』と名付けた始まった品種。彦三郎の並々ならぬ努力の末できたやぶきたの母樹は1963年(昭和38年)静岡県指定天然記念物に指定されています。

彦三郎も浮かばれますね。

やぶきた茶の特徴

やぶきた特徴

綺麗な緑の水色、バランスが良く甘みが程よく感じられ、丁度いい苦みに渋みを持ちあわせる。香りは少ないとされているが、これが緑茶のポピュラーとなっている。

緑茶といえばこの味と言っても良い程、日本人には浸透しているお茶の味。何を買おうか迷ったら、やぶきたの上級茶葉を買っておけば間違いないだろう。

やぶ北ブレンドとは??

テレビCMなどで見た事あるかもしれませんね。

聞かれる事があったので、紹介しておきます。

やぶ北ブレンドとは、ハラダ製茶さんが作ってるお茶のブランドで『やぶきた』品種を使い、玄米茶、ほうじ茶、ウーロン茶、ティーバックなどに加工した商品。

やぶきたは、煎茶のイメージが強かったが、違う商品に加工し、CMなどの宣伝効果で有名になった

品種と生産地

やぶきたは静岡県で生まれたものですが、他の県にはどれ位普及しているのでしょうか?お茶の有名所と各品種を見てみましょう。

静岡鹿児島京都愛知
やぶきた91.533.363.155.5
ゆたかみどり0.0427.100.5
さえみどり0.512.50.81.2
さやまかおり1.800.71.4
さみどり0.0207.925.1
おくみどり0.64.811.711.6
その他5.522.215,85.3
(参考:農林水産省・茶業及びお茶の文化の振興に関する基本方針現状と課題)

どこの県でも一番育てられている品種になっています。

最後に

今や日本のお茶と言ったら名実ともに『やぶきた』ですね。

この様な時代がくると杉山彦三郎さんは夢見ていたのでしょう。

私が静岡在住のこともあり、茶屋に行くとやはり『やぶきた』に出会う事が多いです。ことやぶきたの歴史を知ってからは、感謝の気持ちで頂くようになりました。