日本茶アドバイザーの高橋と申します。
今回はお茶を語る上で欠かせない『香り』についてお話させて頂きます。
お茶の優劣を決めるのには3つの要素があり、『味』『色』『香り』となります。
私、お茶に興味を持ち始めたころ、玉露を頂いた時にする磯の香や覆い香(おおいか)というものが分かりませんでした。最近でもお茶の茶事などに参加させて頂くこともあるのですが、お茶の先生などがお茶の香り評価する時の表現なども分からないものも多かったので、今回はそんなお茶の香りについて学んでいこうと思います。
目次!!
お茶の香り代表的な成分
お茶の香りは約300種もの香気成分あるとされています。種類、品種、気候、土壌などの様々な要因でお茶は一つ一つお茶の香りは変わっていきます。
様々な要因の中でもお茶の種類は特にお茶の香りが大きく変わるので、お茶の種類にはどの様な香り成分が入っているのかを解説します。
香り | 成分 |
若葉の様な | 青葉アルコール |
青海苔の様な | ジメチルスフィド |
スズランの様な (軽く爽やかな花香) | リナロール |
柑橘系 | リモネン |
バラの様な (あたたかな花香) | ゲラオニール |
ジャスミン・クチナシの様な (重厚な花香) | メチルジャスモネート |
桃の様な (果実系) | ジャスミンラクトン |
木質系の香り | セスキテルペン系炭化水素等 |
青苦く重い香り | インドール |
加熱により生ずる香ばしい香り | ピラジン類、フラン類 |
保存中に増加する古茶臭い | ヘプタジエナール |
この様な成分が複雑に重なり合いお茶の香りが作られています。
種類によるお茶の香り
日本茶は加工の過程を荒茶と呼びますが、この荒茶で様々なお茶になります。工程が変わるとお茶の香りも成分も大きく変化します。
私たちが日々頂いているお茶にはどの様な香りがあるのか見ていきましょう。
玉露
玉露やかぶせ茶は『被覆』という他のお茶にはなり作業工程があります。これは荒茶工程でなくお茶を摘む前の工程で日光を当てないようにする作業です。
この被覆されたお茶には独特の香りが発生します。冒頭でもお話した覆い香という良質な海苔を感じさせる香りです。青海苔や磯の香りとも言われます。
この海苔の香りは、ジメチルスルフィドが多く含まれているので感じることのできる香りで、奥行きがあり香り豊か、お茶を頂いた時に、この良い香りが鼻から抜けていきます。
私はこの海苔の香りの意味が解るまで少々時間が掛かりましたが、値段の違う玉露を飲み比べてみた時によくわかりました。品質の良いとされる玉露は良く感じられます。
煎茶
一般的かつ一番流通しているお茶です。色々な品種も流通していますが、皆さん一度は聞いた事はあるものに『やぶきた』などがあるのではないでしょうか。やぶきたも煎茶だけを作っているわけでは無いですが、歴史があり日本人の口にあい流通が多い品種です。
煎茶の香りは若葉の香りと、こうばしい香りのバランスが重要とされています。この若葉の香りは青葉アルコールという成分が新茶の香りを与えています。
上質なものになるとまろやかで深みのある香りとなります。
釜炒り茶
釜炒り茶は釜香(かまか)と言われる特有の香気がありますが、その香り成分の本体は解明されていません。煎茶と比較するとピロール類等の加熱香気成分を多く含んでいる。
深みのあるなどよりは、香ばしくスッキリとした等の表現に当てはまるような香りが特徴的。
ほうじ茶
火香(ひか)という香りがあり、ピラジンという火入れをしたときに出る香り成分が、強く出るためほうじ茶特有の香ばしい香りになる。
ほうじ茶には21種類のピラジン類を含んでおり、ピラジン類などが生成する香ばしい香りは焙焼香気と呼ばれます。
火香(ひか) とは荒茶の最終工程でお茶を乾燥させるため火入れするのだがその際に出される香りの事。
紅茶
紅茶の香りについては重厚なバラの花、あるいは果物のような甘い芳香のあることが良いとされています。
紅茶の花のような香りには、リナロール、ゲラニオールを主とするテルペンアルコールとそのオキサイドが重要であるが、アッサム種から作られたセイロン紅茶の爽やかなスズラン様の香りのものには、リナロールとそのオキサイドが多く、つくられた中国紅茶やダージリン紅茶の重厚なバラ様の香りのものにはゲラニオールが多いことが知られてる。
お茶の香りの表現方法
茶の香りに対しての表現は非常に難しいですが自分が感じたものを具体例や比喩などを用いて伝えられるようになれば様になるかと思います。
私は日本茶アドバイザーという資格を持っていますが、正直お茶の香りを伝える際には失敗が多かったです。あれこれ考えすぎてこんな香りというのですが、自分でも何言ってんだろうと思ってしまう時が多々ありました。
そこで私はいろんな表現方法や比喩を聞くなどして考え勉強し克服しました。そこでお茶の香りを表現する上で用いられる表現をお茶に合わせて幾つかあげてみましたので、その一部をご覧になってください。
玉露香り表現
玉露には覆い香といわれる香りがある。
喩えるのなら・・・上質の青のりのような香り、上質の昆布のような磯の香りと複合的な花の香り、深みのある花と葉の香りなど
煎茶、蒸し製玉緑茶香りの表現方法
みる芽香という香りがある。
喩えるのなら・・・爽快な若芽の香り、切れのある花の香り、茹でた法蓮草のような、新緑の香りなど
釜炒り製玉緑茶香りの表現方法
釜香という香りがある。
喩えるのなら・・・強い爽快な香り、清風のような、上品な黄な粉のような、葉の香りにほんのりとナッツのような香ばしさがなど
ほうじ茶香り表現方法
焙煎香という香りがある。
喩えるのなら・・・アーモンドや燻製のような香ばしい香り、焦がし醤油のような濃厚な香り、コーヒーのような深みのある香り、黒糖のようななど
まとめ
こうしたこれらの茶も入れる前の茶葉の香り、淹れた茶の香りを楽しむことができるだけではなく、淹れた湯の温度によっても香りは随分と変わってきます。種類は様々ですが一般的に上質な物ほどそれぞれの特有の香りがしっかりとしており、深く芳醇です。
数多くのお茶を飲むことで様々な香りがある事を知り、そして自分なりの様々な香りの表現が生まれてくると思います。お茶を飲む機会には人に伝えなくとも自分なりに表現するように心がけておくのが一番ですね。
よく料理の世界では口だけではなく目でも味わうと言われますが、お茶を口と鼻で味わえるのです。そしてその鼻で味わった香りをすらっと比喩表現ができるようになればもうあなたは一端の「お茶通」ですよ。